ビル空調設備における異常状態検知に関する研究
1.研究の背景
ビル内の集中空調設備において、その稼働を監視し安全性を確保するためには異常状態の検知を行う必要がある。 従来の検知では、ビルの管理者が測定値データを目視によって監視する方法によって異常状態を発見する方法を採用していた。
しかしながら、検知対象とするビル空調設備が大規模になった場合には管理者が監視しなければならないデータは大量になり、 人的監視には限度があることが知られている。さらに人間が異常状態を発見するためにはある程度の経験を積む必要があり、 その判断基準にも個人差があることが知られている。
2.これまでの研究成果
ビル空調設備における異常状態は、設備に設置されているセンサが観測した温度や風量といった測定値データの変化によって現れる。 従来の人的な監視業務では、これらの変化を捉えて異常状態と思われる箇所を調査している。 測定値データの変化の種類やその組み合わせにより、異常内容を特定することもできる。
本研究ではパターン認識技術を利用し、客観的に異常状態を発見するシステムを提案している。 このシステムでは観測された測定値時系列について、過去に異常状態として得られた時系列との比較をニューラルネットワークによる パターン認識技術の活用により行い、異常と思われる測定値時系列を抽出する。 提案システムによってビル空調設備管理者の負担が軽減されるだけでなく、多種多様なビル空調設備に対して結果を学習する方法により、 客観的な異常状態検知が可能となった。 システム構築のために、Visual C++ 上でC言語およびC++言語を使用している。
開発したビル空調異常検知システム
3.今後の研究内容
これまで特徴パターン認識システムとしてDSUSを、異常状態検知システムとしてISUSを開発している。 本研究ではこのシステムを利用し、ニューラルネットワークの学習により特徴パターンを検知する仕組みを確立し、 さらにシステム構成要素間の因果関係を利用してビル空調設備全体の異常状態検知を目指す。 またビル空調設備において得られる測定値データのパターンを学習し、将来発生するであろう異常状態を予見する方法を考える。